自分に嘘をつかない

内面を言葉で表現する

山口瞳 「社内旅行」 感想

 

 私は長い本は読まない。

 

集中力がない

 

ということもあるかもしれないが、

 

短編の中の小さな世界が好きなのかもしれない。

 

以前記事にしたが、最近は山口瞳さんの男性自身という本を読んでいる。

 

country-gentleman.hatenablog.com

 

これを書いたのは50日も前だが、この本はいまだに読んでいる。

 

読むペースが遅くて

 

複数の本を同時に並行して読んでいるからこうなるのだろう。

 

さて、今日掘っていきたいのは

 

男性自身 中年編にある「社内旅行」という話。

 

7ページほどの短い話で、

 

社内旅行で社員が無理して酒を飲むのをみて

 

社内旅行自体にうら悲しさを感じてしまうが、

 

なんだかんだ毎年参加してしまう

 

という内容だ。

 

社内旅行は行ったことないが、

 

この気持ちはよく分かる。

 

以前インターンさせてもらっていた会社での飲み会を思い出した

 

みな楽しそうにしてはいるが、

 

一方で場を盛り上げようと必死になっている部分がみえる

 

お酒にも積極的に手を伸ばす

 

IT企業だったので得意でない人もいたはずだ。

 

そんな姿を見るたびに、

 

胸の奥のほうで、空いたような悲しさを感じることがあった。

 

なぜ、悲しい気持ちが起こるのだろうか?

 

思うに、人間関係の難しさのようなものを

 

目の当たりにするからではないだろうかと思う。

 

悩んでも仕方がないので普段は考えないようにしているが、

 

人は人と仲良くすることが苦手である。

 

仲良くするのが得意という人もいるだろうが、

 

これまでの人生をよく思い返してみて欲しい。

 

仲良くできた人がいる一方で、

 

分かり合えない人も一定数いたのではないだろうか?

 

ちなみに余談だが、学校や職場での悩みは人間関係が大半を占めているらしいので

 

仲良くできなくても決しておかしいことではない

 

言ってしまえば、他者との不和は人間の性質の一部みたいなもので

 

こればかりはどうしようもない部分というわけである。

 

だからこそ、関係を良好に保つために無理して酒を飲む社員の姿は

 

そのことを思い出させて悲しくなったのではないか。

 

しかも、飲みの場という明るさが余計に

 

陰の部分を際立たせるように出来ている。

 

 にも関わらず、結局著者は毎年社内旅行に参加してしまっているところが面白い

 

辛いのと同時に、

 

それでもちょっとの無理で何とかやっていけることを再認識できるのは

 

心地よいのだろうか。

 

すくなくとも八方塞がりではないので、希望を見いだすことはできそうだ。

 

 

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山口瞳の短編はやはりおもしろい。

 

繊細な人であるにも関わらず、

 

自身の感情を説明しすぎないところがいい。

 

読み手にも考える余地が生まれるし、

 

伝えすぎないことで、

 

伝わっている部分があるように思う。

 

改めて本の良さにも気づける

 

けっして会うことのない人の気持ちに触れる

 

気持ちに触れることができれば

 

ちょっといい気分になる。

 

人間関係の難しさを話していたのに、

 

気分がよくなるという不思議さが、

 

さらに面白い。