自分に嘘をつかない

内面を言葉で表現する

ぼくは優秀なんだ病。

 

先日、バイトで会場の設営をした。

 

設営といっても、机32台、椅子64脚を並べるだけだ。

 

現場には指揮をとる人が1人と、設置をする人が3人いて

 

人数的にも申し分ない。

 

作業予定時間は4時間だったが、

 

どう考えても1時間あれば終わる。

 

今回の案件は、作業が予定より早く終わっても、

 

予定時間分の給料を貰えることになっていたので

 

これが僥倖、巡り合わせってやつか、なんて思っていた。

 

だがそんな甘い妄想もつかの間、

 

ある男の登場によって、すぐさま、その考えは覆されることとなる。

 

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俺たち4人はせっせと設営をしていた。

 

なんせ机32と椅子64を並べればそれで終了だからだ。

 

やる気に満ち溢れた人間が4人もいれば作業はこの上なく捗る。

 

事実、開始からものの数分で全体の1/3は出来上がりつつあった

 

ちょうどその頃、会場のドアから一人の老人が入ってきた

 

突然の来訪に4人の手が止まる。

 

60代前半といったところだろうか、まだまだ現役といったその老人は

 

こちらを一瞥したあと口を開いた。

 

「うん、やってますね。一番前の机はあそこのラインに合わせてお願いします」

 

床に敷いてあるタイルマットの境目を指差している。

 

どうやらこの老人は一次受けの人らしい、ということを皆がなんとなく理解した。

 

新たな指示がだされたので、一旦図面のもとへ集まる

 

図面にはドアと机の配置場所がアバウトに書かれている。

 

とはいっても、ただ机を横に4つ、縦に8つ並べていくだけだったので

 

先頭を指示されたラインに合わせて、あとは等間隔であけていくだけだった。

 

出口はもうそこに見えていた。

 

と、その時

 

「ここが先頭ということは?ドアがここだから・・・」

 

指揮役のメンバーが図面に線と数字を書き始めた。

 

床にはタイルマットが敷いてあるので、

 

その線に合わせていけば、ほぼ図面通りになるはずだった。

 

だが、理系風の容貌をした指揮役は、理系心をくすぐられたのか

 

タイルマットは多少のズレがあり正確な直線ではない、と言い出した。

 

そのため、先頭の行だけはタイルマットの線に合わせるが、

 

縦列はメジャーで距離を測って配置をするという。

 

何をいっているんだ?

 

残りのメンバーはみな表情が曇っている

 

そうこうしているうちに理系は一次受けの老人とともに

 

メジャーで距離を測り出した。

 

既成事実が作られてしまったので、もう後戻りはできない。

 

出口は入り口へつながるドアだ。

 

...

 

地道な作業を繰り返した末、ついに配置が完成した。

 

歩き回り全体が整っているか確認する。

 

ガタガタしていた

 

全体的に。

 

メジャーで測っても、机を動かすのは結局人で、そのときに誤差が生まれるからだ

 

指揮役は顎に手を当て逡巡する

 

「うーん。タイルマットに合わせよう!」

 

 

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科学や数学はとても便利だ。

 

おかげで移動は速くなったし、夜だって明るい。

 

だが、重きを置きすぎたばかりに、

 

手法に捕われてしまっている人が多いように思う。

 

本来、目的を達成するための道具よりも

 

目的を見つめることのほうが大切なはずなのに、

 

なぜか、道具のほうにこだわってしまい

 

それを使うことが目的になっている。

 

ハードスキルとソフトスキルという概念があるが、

 

これはまさしく道具を目的化する人たちが増えたために

 

生まれてきた概念じゃないだろうか。

 

ソフトしかないのは問題であるが、

 

ソフトのないハードは余計厄介な気がする。

 

だってなまじロジックはあるから

 

もっともらしさでゴリ押しできちゃう。

 

でもそれはらしさだけで、意味ってのはまったくない

 

そこらへんを理解していなかったら、

 

勝手に物事が進んでいっちゃって危ない。

 

だから

 

ハードはソフトありき

 

だから

 

ソフトより始めよ。

 

私はそう言いたい

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言うことで、

 

私は私を慰める。