自分に嘘をつかない

内面を言葉で表現する

身近な竜宮城

 

サウナこそわれわれの竜宮城である。

 

竜宮城ときくと、

 

絢爛豪華な浦島太郎の竜宮城を思い出すことだろう。

 

だが、華やかではないものの

 

われわれの住む世界にも竜宮城は存在する。

 

サウナだ。

 

事の発端は、たまたまサウナの有名店を通り過ぎることがあり、

 

どうせなら入ってみるかという軽い気持ちだった。

 

入ってすぐは、さすが有名店だけあって、人の多さに驚いた

 

その店は浴場中央に6つほど休憩用のイスを置いており、

 

全席裸の男たちが着席していた。

 

人が多いと言っても、裸の付き合いだからか、互いに譲り合いをしていて不快な気分には一切ならなかった

 

皆とてもリラックスした表情で、電車の座席に座るときとは大違いだ

 

その店一押しの水風呂もさすがのものだった。

 

サウナと水風呂で交互浴をした際には

 

それはもう、

 

全身の血流が竜の如く唸りをあげ

 

体内で激しく暴れ回っているのを感じたほどだ。

 

あとには心地よい静けさが待っており、

 

休憩用のイスはそのとき休むために使うという寸法だ。

 

サウナにハマる人をサウナーと呼ぶらしいが、ハマる気持ちがわかった気がした。

 

さて、有名店はアフターケアも万全。

 

入浴後は休憩所 (浴場のイスではないよ)  でリクライニングチェアーに座り

 

ゆったり余韻に浸れるようになっている。

 

そこでは特に何をするでもなく、

 

各々が自由にマンガを読んだり

 

テレビを見たりして時間を過ごしている。

 

私はただボーッとすることにした。

 

眠りはしないが、うたた寝に近い感覚で心地よい状態だった。

 

ふと、気がつくと

 

時計の針は深夜0時を回っていた。

 

記憶が確かならば、

 

私は陽が沈む前に入店したので

 

店でかなりの時間を過ごしたことになる。

 

周りは癒しを求めてきたオジサンで一杯だった。

 

中には談笑をする人たちもいて

 

耳を傾けてみると、いかに自分が不遇であるかを語っていた

 

どうやらこれはいつもの事らしく、

 

その時、マズイなと感じた。

 

オジサンたちにとって、このサウナはとても居心地の良いものなのだろう。

 

特別にしつらえたサウナ・水風呂はあるし、似たような仲間もたくさんいる。

 

どこか非日常の雰囲気がある休憩所は心地よい空間だし、長くいられて値段もリーズナブルときた。

 

そこがマズイ

 

これがたまの贅沢なら問題ないだろう

 

いい息抜きになって、むしろ都合がいいかもしれない

 

だがどうだ、ここまでの好条件が揃うと、人はそれに依存してしまうのではないか?

 

オジサンたちは不平不満を解決することをやめ、ただただこの竜宮城で回復するのを待つようになる。

 

そうこうしているうちに、あっという間に時間は過ぎ去り、

 

気付いた頃にはもうお爺さんだ。

 

良くも悪くも、過ぎるものは、扱いが難しいということを考えさせられた一日だった。

 

そして、サウナへの興味が一気に増した1日でもあった。