禁断の果実
禁断の果実
アダムとイブの口にした禁断の果実
その正体は一体何だったのか?
*
私には絶対にやるまいと決めていることがある。
それは、他人の彼女には手を出さないということだ
自分が過去に浮気されて悲しかったことが理由だ。
以来、どんなに仲がよくなっても、どんなに雰囲気が好みでも略奪したことはない
だが、ふとしたとき、悪魔の囁き声が頭をよぎることはある
「彼氏がいたって奪っちゃえばいい」
誘惑の力は強く、私は一度、他人の彼女にちょっかいを出してしまった
結局略奪はしなかったものの、
そのとき女がなびいていれば危うかったと思う
偉そうに決まり事などと言いつつ、偶然が重なっていれば
決まりはいとも簡単に破られていた。
当時の私は、どろどろした感情に包まれていた
*
そんな私だからこそ、アダムとイブが禁断の果実に手を出してしまった気持ちが少しは分かる
禁断の果実の実体を掴むのは難しいが、おそらくそれは自身の心の中にあったのだと思う
食べた実自体に毒があったわけではない
毒はきっと自分が作り出していたはずだ