自分に嘘をつかない

内面を言葉で表現する

駅前の果物(フルーツ)売り

 

 

7月初め

 

夏の暑さも徐々に頭角を表してきた頃、

 

駅前で果物売りをみかけた。

 

桃5つで300円

 

山梨産らしい

 

安い。

 

安い、

 

が、

 

怪しい。

 

売り手の姿はどこか浮浪者のようであり、

 

危ない匂いがプンプンする。

 

危ない匂い...

 

近づいて話を聞いてみると

 

どうやら5個300円のは傷んでいて小さいので

 

これはもう売れないという。

 

じゃあ何を販売しているかというと、

 

その脇にある大きくて綺麗な桃4つ、これが1000円だと言う

 

まず感じたこと、

 

騙されたという気持ち。

 

そして、

 

「大きくて綺麗な桃」は、

 

そこまで大きくなく綺麗でもない。

 

でもまあ、

 

なんとなく悲哀感が漂っていたので

 

800円なら買うと申し出た。

 

それならば、

 

5つにするから1000円で頼むと言う

 

うーん

 

一瞬迷った後、

 

物は試しと買ってみた。

 

家に帰って食べてみる

 

おいしかった。

 

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翌週、

 

違う駅で別の果物売りをみつけた

 

売っているものは相変わらず桃だった。

 

札をみると、

 

例のごとく「5個300円」

 

はーん。

 

近づいて話を聞くと

 

これは小さくて傷んでるから

 

と、いう。

 

そしてこれまた大きくて綺麗な桃を売り込んでくる (これもそこまで大きくないし綺麗でもなかった)。

 

ただこっちは3つで1000円だという

 

あ、こいつ俺を舐めてるな

 

前回5つ1000円で買った経験から

 

俺の中にも桃の相場というものが出来上がっていた。

 

そこで俺は

 

「7つ1000円だ」

 

ふっかけてやった。

 

相手は怒った

 

桃はそんなに安くねーんだよ!

 

スーパーみてこい!

 

まくし立ててくる。

 

うるせえ、お前は鏡をみてこい

 

そう思いながら、見切りをつけてその場を後にした。

 

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後になってわかったことだが、

 

桃5つで1000円は別に安くない

 

ましてや、3つで1000円なら結構いい桃が買えるらしい

 

スーパーなんかだと、

 

特売なら桃1個100円で売ってるとこもあるとか。

 

世間知らずなので、当初は得したぜラッキー、なんて思っていたが

 

とんだカモだったというわけだ。

 

逆にいうと、俺みたいな世間知らずなら、たとえ相手が浮浪者のような連中でも簡単に騙せるというわけだ。

 

そんなことを考えていると、

 

ふと、

 

疑問に思った。

 

世間知らずは浮浪者に騙される

 

浮浪者は世間知らずを騙せる

 

なら、俺が不自由なく過ごせて、彼らがボロを着て生活しているのはなぜなんだ?

 

もしかしてこれは、

 

本人の力量ではなく

 

他力によるところが大きいんじゃないか?

 

少なくとも、

 

個人レベルで考えたら

 

彼らは世間知らずよりよっぽと賢い。

 

...。

 

いや、でも

 

本当に他力がすべてだろうか?

 

世間知らずの俺が不自由なく暮らせるのは他力だとする。

 

でも、彼らがボロを着ているのは、本当に他力がなかったからか?

 

彼らがあの立場にあるのは

 

彼ら自身にも問題はあるんじゃないのか?

 

いわゆる、自力不足。

 

辛抱強さというか、甲斐性というか、

 

ちょっとは耐える、みたいなものも、

 

必要なんじゃないだろうか。

 

「桃はそんなに安くねーんだよ!」

 

「スーパーみてこい!」

 

オッサンの言葉を思い返して

 

そんなことを感じる。

 

他力と自力

 

物事をうまく進めるのにどちらが必要かなんて

 

俺に結論はだせない

 

ただ、

 

少なくとも、

 

ちょっとは耐える、

 

自力のようなもの、

 

これはあったほうがいいんじゃないかなー

 

とか

 

思ったりする。