自分に嘘をつかない

内面を言葉で表現する

お金の持つ力

 

お金の持つ力を実感する出来事があった。

 

それは、家を間借りさせてもらうことになった時のこと。

 

その家の人は、最初、お金に興味がないと言っていた。

 

「空いてるスペースがもったいなくてね」

 

「何かに役立てられればと思って」

 

お金の話が得意でなく、人との信頼関係を大切にしてると宣った。

 

話はスムーズに進んだ。

 

数日後。

 

日本の様子が一変した。

 

首都圏では緊急事態宣言が発令され、飲食店やエンターテイメント業界は大打撃を受けた。

 

私の勤め先も例外ではなく、コロナ感染を避けるため臨時休業を行った。

 

自粛の影響は思いのほか懐に響き、格好をつけてる余裕はなかった。

 

そのため、家の人に再度の家賃交渉を持ちかけた。

 

話を切り出すと、彼は、今まででは考えられない声音で怒り出した。

 

そこにあったのは断固拒否の姿勢。

 

一切譲歩はなく、話し合う隙もなかった。

 

彼の主張はこうだ。

 

「今お金がないのなら、親に保証人になってもらうかローンをしろ」

 

俺は恐ろしくなった。

 

なんだこいつ、誰よりもお金にガメツイじゃないか。

 

あの無頓着な様子は、すべて演技だったのか?

 

さらに奴は、言葉を続けた。

 

タラタラと長いこと言われたが要約するとこうだ。

 

「お前は甘い。社会をなめるな」

 

たしかに俺は甘いところがある。

 

ただ、それをお前には言われたくないし、今回に限っては交渉を持ちかけただけだ。

 

俺は人が変わる瞬間というものを始めてみた気がする。

 

今までも人が変わったのを見たことはあるが、これほど見事に分かりやすい豹変は初めてだ。

 

俺の中で、こいつはもう、信用できなくなった。

 

最初の印象がすこぶる良かっただけに、今じゃもうドン底に糞のようだ。

 

嫌なものを見た。

 

とはいえ、これは俺にとって大きな教訓になるだろう。

 

お金で人は変わる。

 

胸にしっかり刻みつけておこうと思う。

 

同時に、このような体験が大人を作り上げていくのだと悟った。