自分に嘘をつかない

内面を言葉で表現する

悲惨な誕生日

人間は、みんな等しく自分だけの誕生日をもっている。

 

今話題のあの人や、ちょっと気になるあの人も。

 

全く感覚が合わないあの人たちも、遠い歴史の中のあの人物だって、例外じゃない。

 

誕生日がいつか正確な日時は知らずとも、とにかく生まれてきたからには避けられない。

 

そんな誕生日。

 

私の悲惨な誕生日

 

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朝、目が覚める。

 

携帯のチェック

 

母親から祝いの連絡あり

 

祝ってくれるのは素直に嬉しいが、親というのはやはり特別なのか、同時に反抗的な気持ちも起こってしまう。

 

だが私も思春期はすぎたので、文面は素直なほうで返した。

 

そうこうしているうちに大学の時間だ。

 

いつものように小走りで駅へ向かい、ぎりぎりの時間で間に合う。

 

と思ったら、なんと電車が遅延していて30分のスカを喰らった。

 

幸先悪いなあ、なんて思いつつも出席確認にはなんとか間に合ったので、ホッと一息。

 

1, 2限をいつものようにのらりくらりとかわし、3限は体育で汗を流した

 

グループ授業ではよくあることだが、ふざけた大学生とペアになったためややご機嫌ななめとなる

 

だが今日は誕生日。

 

できるだけ幸せな気持ちで過ごすようにしよう

 

そう考えるようにした。

 

授業がすべて終わると、私は就職活動の一環として、希望する会社の店舗回りを行った

 

その会社はB to Cの会社なので、実際に現場(実店舗)をみて回るのがいいらしい

 

店舗回りは以前から計画的に行っており、今日でちょうど目標数の20店舗をクリアする予定だった

 

誕生日なのにちょっとめんどくさいな、という気持ちを抑えつつ、

 

まじめに生きるために今は辛抱だ、と踏ん張って活動をやりとげた。

 

目標をクリアした達成感も後押しをし、なにか自分にご褒美を与えようと考える

 

食べものがいいな

 

焼肉にしようか、と一瞬迷ったけれど、お金もそんなにないので、私はマク◯ナルドのバリューセットを持ち帰った。

 

まあ、ぼちぼちの誕生日だったな

 

そうこうしていると、携帯に例の会社からメッセージが届いていることに気づいた

 

なになに?

 

「書類選考の結果」

 

「残念ながら----」

 

せっかくの店舗回りも発表する場を失い、面接も行われないまま企業からお祈りをされた。

 

気持ちは一転

 

ブルーになる。

 

しばらくの間、

 

なんで落ちたんだ?

 

とか

 

なにがやる気だばかやろう

 

など、例の企業に対してヘイトの気持ちを募らせていた

 

それもひと段落すると、

 

次は頭がボーッとしてきて、

 

ふいにケーキが食べたくなった。

 

今日誕生日だし、いいよな。

 

たしかコンビニで、売ってるんじゃなかったっけ。

 

そう思い、自分に甘い今日は自然とコンビニへ足が向かった。

 

近くにはコンビニが2つあるが、片方は最近品薄が続いているため、もう一方へいくことにした。

 

これがミスだった

 

5分ほど歩いてコンビニへ着くと、店舗の前でたむろする5〜6人の集団がいた。

 

邪魔だな、と思いつつも入店。

 

ケーキは置いていなかった

 

代わりにホイップを菓子でつつんだオヤツで手を打つ。

 

店を出る

 

集団はまだいた。

 

地面に座り込む連中の側には、アルコール飲料の缶がいくつか置いてあった

 

これはさすがに邪魔だな

 

と思い、店舗の前から退くように注意をした。

 

ちょっと偉そうに言った

 

それが気に障ったのか、集団の一人が

 

うるせーな

 

という反応をみせる。

 

中には常識的な人もいて、なんでも久しぶりに会った仲間たちとちょっと楽しく飲んでいた、という事情を申し訳なさそうに話してきた。

 

楽しそうなところを、ましてや久しぶりの再会を邪魔したくはないが、店舗前でアルコールだったので退くまで注意し続けた。ちょっと喧嘩腰だった。

 

最後の方は反抗的な1人と一対一の罵り合いになったが、常識的な人が移動を始めてくれたため、なんとか丸く収まった。

 

この出来事を通して私は、見たくない自分に気づく

 

連中に注意したのは、自分が不採用の連絡をうけて、イライラしていたからじゃないのか?

 

反抗的な奴と罵り合いをしているとき、ヒザがすこし震えていたな。いつも偉そうにしているくせに、俺は臆病者か。

 

連中を注意しているとき、頭の片隅でコンビニの女店員をすこし意識していただろ。ばしっと注意する姿をみせて気を惹きたかったんじゃないか?

 

誕生日なのに母親以外に祝われないから、集団で仲良くする彼らにテイのいい八つ当たりをしたんじゃないのか?

 

俺は、虚勢人間か?連中の中に常識人がいなかったらどうなっていた?きっと不毛だったんじゃ。俺は、中身を追い求めてきたが、意識の端で馬鹿にしてきた連中より、影響力が低い。

 

こうして、問う形を取っているのも、俺のプライドを支える最後の砦だ。

 

俺は誕生日に、20数年で培ってきたものの裏側、自分の垢みたいなものをまざまざと見せつけられた

 

幸せな1日にしようと思った昼間が遠い過去のようである。

 

自分だけには嘘をつくまいと生きてきたのに、こんな形で不意に自分のヤな側面を知らされるとは。

 

なんとも