原点
どこまで捻くれながらも、自分の原点を忘れたことはない。
俺は大事なことをよく忘れる。自分さえ騙すことがある。記憶を心底からは信用できない。
それでも、大事なものだけはなかったことにしたくない。だから自分に嘘をつかないと決めた。
大海で、ただぶかぶかと漂う。寄り場どころか何もない。
やがて、水の中にあることを知った。
何もかも捉えどころがなかったが、少しだけ希望が持てた。
現在。
俺だけじゃない、大海にはすべてのものが浮かんでいた。
あるものはあるものたちと手を繋ぎ、陸を形成しようとしている。
あるものは悲壮な顔をしながら少し離れたところで漂っている。
あるものは陸ほどではないが、小さな集まりを作っている。
すこし賑やかになってきた。
俺は陸の方へ向かおうと思う。今まさに動き出す瞬間だ。
*
思えば、自分の居場所を教えてくれたのは原点だ。
常に俺を支え、まっとうな道へ導いてくれた。
感謝してもしきれない。
だから一緒にいたことを忘れないように、自分に嘘をつかず、毎年、あの日がくると一日中思う。
記念日ってそういう感じだよね?