言葉の方向/ 13. 漠
誰かに言葉をかける時。
その方向は誰に向いている?
心配していた。
気を遣った。
優しくした。
誰のために?
その思いが相手を苦しめることがある。
結局苦しめたのなら、その言葉は自分のためのものじゃないだろうか。
少なくとも、苦しめられた側はそう言い訳をしたい。
大切な人を憎みたくもないし切れないし、かといって受け止めたり消化したりすることもできない。
だから言い訳をさせて欲しい。
その言葉は自分に向けていってるんだろう?
俺を傷つけるとも知らずに、知らず知らず、そう言ってしまってるんだろ。
辛くてしんどくてやるせない気持ちがどっとくる。
もう、そういうものだと思うしかない。
こんなこと考えること自体嫌だけれど、これ以外に俺は方法を知らない。
直接言っても無駄だ。もう相手をどうこうすることはできないと分かってる。
他人は変えられない。言ったところで泣かれるだけで、悲しみが増えるだけで何もできない。
今わかった、俺がこの事態にものすごくイライラさせられて悲しくて苦しい思いをさせられるのは、何もできない無力感を思い知らされるからだ。
俺は自分に無力を感じることが大嫌いだ。大嫌いで大嫌いで、どうしようもなく大嫌いでこれまで頑張ってきたんだ。
無力だと?ふざけるなクソが。
本当に嫌だ。でも切ることも傷つけることも離れることもできない。
どちらが悪いわけでもない。善意が集合しても悲しみはなくならないというだけだ。互いに気を遣いすぎて、善意が仇となる。
ふざけるな。善意で苦しめられたら俺はどこに怒りを吐き出せばいい??
ふざけるな。ふざけるな。もうやめてほしい。ふざけるな。ふざけないでほしい。
善意で俺を殺そうとするな。
*
13. 漠
今日の写真は漠
カメラを振って撮った。
俺の今の気持ちはこんな感じ。
視界がぶれて、うまく定まらない。
何がいいのか分からないし、どっちに何があるかも、どこに行こうかも分からない。
漠という言葉のイメージが合っている。
ぼんやりしていて境目がない。
とても腹が立つ。