自分に嘘をつかない

内面を言葉で表現する

小さな種をまく女たち

 

男はデリヘルを安ホテルへ呼んだ。

 

時計の短針と共に女も二回転するプラン。

 

「さて...どうしてやろうか...」

 

男には企みがあった。

 

とても、とても真剣に考えている。

 

「あれをこうして...それから...」

 

だが、残念なことにこの企みには現実性がなかった。

 

当人以外はこれを妄想と呼ぶだろう。

 

トントン

 

女が来た。

 

予想より早い到着だったので、企み、もとい妄想は霧散した。

 

ドクンドクン

 

扉の開いた先に女が立っていた。

 

男は予定通り笑顔で女を出迎えた。

 

いろいろ頑張ってみたが、結局、男は企みのタの字も満たせなかった。

 

別れ際、少しだけ近寄れたが、時すでに遅し。

 

次だ。

 

時計の短針はまだ一回転を残している。

 

男は次に全てを懸けることにした。

 

いろいろ頑張ったが、

 

やはりこちらもダメだった。

 

ダメどころか、男はすべて先手を打たれ、何もすることができなかった。

 

女は男の何枚も上手だった。

 

人間関係のシビアさを痛感し、己の了見の狭さを思い知る。

 

「俺が今まで見ていたものは...」

 

短針が二回転する。男はちょうどその分だけ、世界から自分が取り残されていたことを知る。

 

世界は俺より二周先を周っていたのだ。

 

いつからか。

 

小学生の後半には、もう遅れを取っていた。

 

もう戻ることはない。

 

男は、前を向くための、小さな種を植えてもらった。