「一人じゃない」を投げかけてきた新聞配達員
なぜ?
なぜ、同じ境遇の他人を見つけると、元気になるんだ?
時刻は深夜二時。
訳あって、移動しつつ野宿をしている。
今日はいい寝床が見つからない。
連日歩きっぱなしだし、なんだか体調も優れない。
これはいよいよ危ないぞ。
--なんて思いながらバス停のベンチに腰掛けていると、ブロロロロ、という音が聞こえた。
音のほうに目をやると、小型バイクが走っていた。
ポストに新聞を入れている。
新聞配達員だ。
一瞬、頭が混乱した。
こんな早くから?二時??あれ?もしかして強盗??変装???
結局、様子をみていると新聞を入れているだけだったので、正真正銘の新聞配達員だった。
俺は次第に嬉しくなってきた。
こんな時間から頑張っている人がいる。
俺だけじゃなかった。
新聞配達員はいつもこの時間から頑張っているんだ!!
嬉しさの後、疑問が起こる。
なんでだろう。
なんで俺は他人をみて喜んでるんだろう。
ただ、同じ時間に頑張っているというだけなのに。
それだけなのに?
この気持ちはまだ、うまく説明できそうにない。
わからん。
一人じゃないということが、なぜこんなにも嬉しいのか。
歳をとると人肌恋しくなるというけれど、それはもしかしてこの気持ちの先にあるのだろうか。
一人か、一人じゃないかという気持ちは、もしかして人間にとって大きな問題なのではないのだろうか。
人間の根本に関わるような。
あの新聞配達員と俺の間には、一体、なにがあったのか。